頭痛

一口に頭痛と言ってもその原因と症状は多種多様です。頭痛を大まかに分類すると一過性の頭痛と慢性的な頭痛に分けられ、更に慢性的な頭痛には頭痛を引き起こすような基礎疾患の無い状態で繰り返し症状を訴える「一次性頭痛」と、高血圧症や動脈硬化症、脳梗塞、脳腫瘍など頭痛を引き起こす基礎疾患を持つ「二次性頭痛」に大別することができます。

二次性頭痛の場合は医療機関で基礎疾患の治療を行なうことが最優先されます。

一次性頭痛の場合は症状を緩和させる対症療法が中心となり、痛み止めが処方される投薬治療以外にも鍼治療を組み合わせることで、更なる症状の改善が見込めます。

まず慢性頭痛のデータから検証していきます。日本で慢性頭痛を持つ患者数は約3900万人、実に4割近い日本人が慢性頭痛に苦しんでいるということになりますね。症状別では「偏頭痛」が約840万人、「緊張型頭痛」が約2200万人、「群発性頭痛」が約12万人と言われています。高血圧の患者数が約1320万人と言われていますから、いかに日本人には頭痛持ちが多いかということが分かります。また偏頭痛持ちの人の中には緊張型頭痛の症状を持つ人も多く、この両方の症状を併せ持つタイプの頭痛を「混在型頭痛」と呼んでいます。

次に慢性型頭痛を男女比で観てみましょう。女性に多いのは「偏頭痛」と「緊張型頭痛」です。特に偏頭痛は男性の3.6倍の有病率とされています。一方男性に多いのが「群発性頭痛」でこちらは女性の5~7倍の有病率に達しますが、群発性頭痛の患者数自体が少ないので、トータル的にみると女性の方が頭痛持ちが多いという結果になります。

02.頭痛の原因

では、一次性頭痛(偏頭痛、緊張型頭痛、群発性頭痛)が何故起こるのか、その原因について探っていくことにしましょう。

一次性頭痛の共通点は、特に頭痛を引き起こすような基礎疾患が無くても、慢性的に頭痛を覚え、症状に規則性があるという点です。症状についての詳細は「頭痛の症状」の章で述べていきます。このような一次性頭痛の主な原因はストレス、飲酒、喫煙、寝不足、ホルモンバランスの異常などです。特にストレスは一次性頭痛の誘発原因としては一番注意しなければならない厄介者で、同じストレスでも肉体的なストレスよりも精神的なストレスの方が頭痛を起こす要因になりやすいと言われています。「緊張すると頭痛がする」「イライラすると頭痛がする」というのもあながち嘘では無いということですね。肉体的なストレスが頭痛の原因になるケースとしては、目の疲れ(眼精疲労)や肩こり、首筋のこりが蓄積して、緊張型頭痛を引き起こすというのが最も頻度が高くなります。

ストレスが一次性頭痛と大きく関わっている根拠としては、ストレスを感じた時の血管の動きが挙げられます。脳はストレスを察知すると、万が一の場合に備え血管を収縮させて失血死を防ごうとする防御指令を出します。これは自律神経の働きによるもので、意識的にコントロールすることが出来ないので、ストレスを感じている時にはストレスの程度や種類に関わらず一様の働きをしてしまいます。これは本来脳が持つ高度な防御システムなのですが、慢性的にストレスを感じている人の場合、日常的に血管が収縮している時間が長引くことで血流が低下し、様々な障害を来すことになります。一次性頭痛もこうした自律神経のストレス防御システムが大きく影響していると考えられているのです。ただし、これ以上の根本的なメカニズムは分かっておらず、頭痛発作は原因不明の難治性疾患であると言えるでしょう。

03.頭痛の症状

この章では一次性頭痛(偏頭痛、緊張型頭痛、群発性頭痛)の疾患別にどのような症状を覚えるのかについて説明していきましょう。

「偏頭痛」

痛み方:ズキズキとする拍動性(脈拍と連動しているという意味)の頭痛になります。

痛みが出る頻度:月に1〜2度程度です。

痛みが持続する時間:数分から72時間程度です。

偏頭痛の特徴:偏頭痛は「片頭痛」と表現することもありますが、これは症状がどちらか片側に出ることが多いからです。しかし、左右共に症状を訴えるケースもあり、今では偏頭痛という表記が一般的になっています。偏頭痛の痛み方の特徴は二日酔い明けの頭痛と良く似ていて、ストレスによって極度に収縮した血管が一気に拡張することで、心臓の動きに合わせて「ズキズキ」とする激しい痛みを覚えるということが分かっています。更に偏頭痛には予兆と前兆という特徴的な症状があり、「予兆」は偏頭痛発作の数日前から直前にかけて起こり、イライラしたり怒りっぽくなるなどの「不定愁訴」と呼ばれる症状がおよそ20%の頻度で起こります。一方「前兆」は発作が起こる直前に視野の一部に欠損が生じたり、閃輝暗点(せんきあんてん)と呼ばれるギザギザとした光が見えるなど特徴のある症状を呈します。予兆も前兆も偏頭痛患者の全ての人が感じるという訳ではありませんが、一度これらの症状が出るとそれ以後も発作の前には感じるようになるので、早めに痛み止めを飲んで安静にしているなどの対処法をとるようにしましょう。

「緊張型頭痛」

痛み方:頭全体、両サイド、後頭部にギューっと締め付けられるような痛みを覚えます。

痛みが出る頻度:反復性緊張型頭痛の場合は月に1〜2度程度、15日以内という頻度になり、慢性緊張型頭痛になるとほぼ毎日のように頭痛を訴えます。

痛みが持続する時間:30分程度から長い場合は1週間ほどになります。

緊張型頭痛の特徴:精神的なストレス以外にも肩こりや眼精疲労など肉体的なストレスが原因で起こりやすい頭痛です。また慢性的に毎日発作が起こる「慢性緊張型頭痛」と断続的に一定期間内に集中して発作が起こる「反復性緊張型頭痛」に分類され、更に偏頭痛と組合わさる「混在型」も多いと言われている頭痛です。

「群発性頭痛」

痛み方:左右どちらかの目の奥がえぐられるような激しい痛み方をします。

痛みが出る頻度:年に数回程度、1、2ヶ月の間に集中して起こります。

痛みが持続する時間:15分から3時間程度

04.頭痛の予防法について

一次性頭痛(偏頭痛、緊張型頭痛、群発性頭痛)の主な原因は「ストレス」だと言われています。したがってこれらの頭痛を予防するにはストレスコントロールが非常に重要となります。頭痛以外でもストレス社会と言われる現代においてはストレスは万病の元とされていますので、ストレスと上手に付き合うことが今を健康に生きる秘訣とも言えますね。

ただ、一口にストレスと言っても「精神的なストレス」や「肉体的なストレス」があり、あまり語られることはありませんが、それぞれに「良いストレス」と「悪いストレス」とが存在しています。「悪いストレス」とは人間関係の悩みや仕事の悩みなどの精神的なものは「悩み」や「不安」という言葉で分類されます。肉体的な「悪いストレス」は怪我や病気などですね。では一方で「良いストレス」というのは一体どのようなストレスを指すのでしょうか?

「良いストレス」を分かりやすく表現すると「達成感を得られるストレス」になります。例えばスポーツの試合で勝つと、大きな喜びや達成感が得られますよね。ところが試合中は精神的にも肉体的も極度の緊張感を覚えます。恋愛の「ドキドキ」も同様ですね。このように肉体的には心拍数や呼吸数が上がるような負担が大きい状況でも、乗り越えて目的を達成すると大きな喜びに変わるのが「良いストレス」なのです。

5.頭痛には鍼治療が効果的

医学的な原因がはっきりと特定されない「一次性頭痛」はストレスが主な原因とされています。これは裏を返せば偏頭痛や緊張型頭痛、群発性頭痛に対しては痛み止めを処方する以外有効な治療法が無いということを意味しています。痛みに対して痛み止めを処方するというのは「対症療法」と言って、根本的な治療法ではありません。しかし、鍼治療を取り入れることで「頭痛に振り回される生活から頭痛を上手にコントロールできる生活」にすることが可能です。これは「痛いから痛み止めを出す」という臨床医学とは違い、鍼治療では継続的な症状の緩和と予防を主な目的としているからです。鍼治療とは経絡と呼ばれる人体のエネルギーポイントを刺激して、血液と気の流れを改善する東洋医学に基づいた治療法です。施術には国家資格を持った鍼灸師が当たるため、痛みも少なく安心して受けることが出来ます。

鍼治療の中でも連動する痛点を探り当てる「トリガーポイント鍼治療」は一次性頭痛の予防と改善に効果的と言えるでしょう。トリガーポイント鍼治療のアプローチとは、今痛みを感じているポイントを刺激すると、それに連動する別の部位にも痛点が現れるので(これをトリガーポイントと言います)、そのトリガーポイントに対しても鍼治療を行なうという方法になります。例えば、肩と首の付け根のこりを指圧すると前腕側の肘が連動してしびれや痛みを覚えるのですが、これがトリガーポイントとなります。

このように頭痛にも存在するトリガーポイントを探し出して、鍼治療を施すことで、その部位の痛みの元が消失してゆき、頭痛発作そのものを起こしにくい状態にしていくのがこの治療法の目的となります。一次性頭痛の発作時のように強い痛みに対しては痛み止めが有効ですが、そこにトリガーポイント鍼治療を組み合わせることで、より効果的に頭痛発作の痛みから解放されやすくなるのです。辛い頭痛発作にお悩みの方は是非当院の鍼治療をご用命ください。

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